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朝ごはんを異文化理解の手がかりに「朝ごはんを通して世界を知る」カフェレストランWORLD BREAKFAST ALLDAY


「カルチャーを通して異文化理解を深める」 ウェブメディアGradeco. 第1回目の取材はWORLD BREAKFAST ALLDAY外苑店にお邪魔した。


外苑西通りを千駄ヶ谷方向に進むと見えてきたのは カラフルな外観の可愛らしいカフェレストラン ここはWORLD BREAKFAST ALLDAY外苑店、 2ヶ月ごとに国を変えて、世界各地の朝ごはんを提供し続けている。 私たちが取材にお伺いした2020年6月に提供されていたのはベルギーの朝ごはん 外観にはベルギーの旗がはためいていた。



今回私たちがお話を伺ったのは

WORLD BREAKFAST ALLDAYを運営する株式会社ステープル代表取締役の木村さん。

「朝ごはんを通して世界を知る」というアイデアに至った経緯はなんだったのかということから、今までの苦労、これからの展望など広範囲にわたり興味深い内容をお聞かせくださった。


「朝ごはん」が教えてくれた面白さを僕の中だけで終わらせてはいけない

インタビュアー:このお店を始めようと思われたきっかけを教えてください。


木村さん:そうですね、実はもともと、栃木県の日光で日本の文化とか日本建築を知ってもらうためにゲストハウスをやっていたんです。

僕として接客をやっていく中で、せっかく色んな国から来てくれているお客さんに日本のことも伝えつつ、お客さんの国についても知りたいなと思って。

そこで「あなたの国はどんな国なんですか」って聞きたいんですけれど、初対面だし、僕もすごい英語が流暢に話せるわけではないのであまり話が弾まない、

同じように相手側も何を話したら良いのかわからない、ということに苦労していたんです。

そこでたまたまある人が自分の国の食文化について話してくれて、疑問をぶつけるとスラスラ答えてくれた、食べ物の話を通してコミュニケーションをとることができたんです。

当然その人って料理人ではないんですけれど、1日3食自分の国のご飯を食べてるから自分の国のご飯についてはかなり詳しいんですね。

このように「食べ物を通して異文化交流」っていうのは結構敷居が低いというか誰とでも話が弾むんだということが分かったんです。




そういう話の中でたまたま「朝ごはんでこんなの食べてますよ」

っていう話になって、それを聞いたときにすごく聞きたい内容だったんです。

っていうのも例えば日本食と言われたらお寿司とか天ぷらとかって言いたくなるんだけど

それが日本の食文化(の全て)かっていうと

結構特別な料理で毎日食べているものではないじゃないですか。

「朝ごはん」っていうと白いご飯とか味噌汁とかが伝統的で

それらって結構毎日食べる当たり前のものであり、日本の食文化の基本で。

同じように外国の朝ごはんメニューにも

そういった基本的な食文化を切り取った料理が並んでいるんです。

そういうのもなんか素朴なんだけどすごいこう...面白いなって思って、

そこから朝ご飯に興味が湧いて。

それからもう5年くらい

「朝ご飯に何を食べているんですか」っていう感じで聞いてたんですけれど、

せっかく教えてもらった面白さを僕の中で終わらせてしまうのではなくて

「お店にしたら色んな人が楽しんでくれるかな」という思いつきで始めたのがこのお店です。



インタビュアー:そうなんですね。

次にこのお店を経営する上でご苦労されたことを教えてください。


木村さん:ゲストハウスに来るお客さんから教えてもらったヒントからお店を始めましたが、それだけだとメニュー構成を聞いてるだけなのでお店で出せる料理は作れないんです。

例えば味噌汁一つとっても、アメリカの人が味噌汁作ってみるっていって作って、

出来たと思っても多分日本の人が食べたら

「これちょっと違うんですけど」

って言いたくなると思う。

朝ごはんって結構そういうものなので、毎回やっているのは現地の人にお付き合いいただいて、メニューを教えてもらうところからスタートしています。

その後食べてもらって、大丈夫だとなってからメニューにするんです。そこですんなり東京でそういった協力者が見つかる時もあれば、そうではない時もあって。

見つかったとしても食材が手に入らなかったり、基本的な食材が手に入っても絶対にこの調味料がないとダメだとか、どこかでつまずくこともあるのでそういったことが大変ですね。


ちょっと変わった「朝ごはん」も。

インタビュアー:今まで提供されてきた朝ごはんの数と、

その中での木村さんのおすすめを教えてください。


木村さん:2ヶ月毎にこの特集メニューを変えていて、もう6年以上やっているので

今まで40カ国以上の朝ごはんを提供してきました。

これまでやってきて人気の高かったメニューをレギュラーメニューにしていて、

今やっている台湾のものであったりとか、そういったもはおすすめですね。

個人的なおすすめとしては、ペルーのタマルという料理があります。正直はじめ教えてもらって食べた時に

「これメニューできないかな」っていうくらい美味しくないかなって(笑)

思ったんですけれど、2ヶ月間やっていったんですけど、2ヶ月間やっているとどうしても何回も食べるじゃないですか、

そうしたらだんだん美味しくなってきて最終的には「また食べたいな」って。


インタビュアー:ちなみにどういったお料理なんでしょうか


木村さん:ペルーではとうもろこしをよく食べるのですが、

とうもろこしを粉にしたものに、鶏肉とかオリーブとか唐辛子とかを埋め込んでバナナの葉っぱで包んで蒸し焼きにする料理で、いわゆるとうもろこしのちまきみたいな感じです。

やっぱりとうもろこしの香りっていうのがあって、はじめ臭いなと思ったりしたんですけど、その臭みが逆に癖になるというか。

それこそ、納豆とか梅干しとかって初めは抵抗がある人が多いかもしれないですけど、毎日食べてるとだんだん危険がないというのが分かってその奥にある美味しさに気づく。結果毎日納豆が食べたくなったりする。

そういう感じで、タマルも最初は「臭っ」って思って(笑)本当に食べたいと思わなかったんですけど、だんだん食べてると病みつきになりました。

食べ物と嗅覚の関係とかそういうのもあるのかな〜と思ったり。

ペルーの朝ごはん、タマル



政府観光局・大使館の方々のご協力もあり完成する「朝ごはん」

インタビュアー:(今月はベルギーですが)どのようにして次に提供する朝ごはんを決めているのですか?


木村さん:日本って季節があるじゃないですか。暑くなったり寒くなったり。

世界には暑い国と寒い国があって、例えば年中暑い国だと体の体温を下げるような効果のある料理が多いんですね。そういうメニューを冬にやっちゃうと寒々しい(笑)

だから基本的には季節に合わせて次に作るメニューを選んでいます。

あとは、キリスト教だと一年で一番大きな行事はクリスマスであったり、

アジアの国だと春節という行事があったりとか、大きなイベントごとってあるじゃないですか。そういう時には行事を取り上げて、朝ごはんと絡めてその国らしさを伝えることができたら面白いかなと思って。

なので季節やイベントを考えながらメニューは選んでいます。




インタビュアー:メニューを教えていただく現地の方とはどのようにしてつながるんですか?


木村さん:初めはもう、手探りで。

たまたまお客さんで外国の方も来てくれるので、来てくれたお客さんと話が弾んで

「次じゃあ教えてよ」ってなったりとか、そんなんで初めの方はやっていました。

最近だと政府観光局さんとか大使館さんとかそういうところにアプローチをすると、興味を持ってくれて協力してくださるということもあるので、そのようにメニュー作成を行っています。

特に政府観光局さんなんかは「こういう場所でこの食材が手に入ります」なんていうことを教えてくれたりするので、そういうのを手掛かりに開発していって、次は実際に食べてもらって、でやっぱり一回じゃ「なんか違うな」とかなっちゃうんですけれど、それを数回繰り返していってメニューを決める感じです。


「朝ごはん」を通して知る各国の歴史的背景

インタビュアー:各地域ごとの朝ごはんにも類似点があったりするのですか?


木村さん:やっぱり地域が近いとまず気候が似てるから似たような植物や魚を食べる習慣があって。日本と韓国だったら同じようにお米を食べたりするように。

あと気候だけではなくて宗教の関係で類似点があったりもします。

だから例えばアメリカの人が日本料理と韓国料理を見たら区別つかないかもしれない(笑)だからやはり似ているところはあるのかなと感じますね。

一方で、日本の人が韓国料理を見て「日本の料理だ」とは思わないじゃないですか、

やはりそこには違いもあるんですよね。



インタビュアー:逆に大きな国の朝ごはんだと数種類のメニューをお出しになられていますよね。


木村さん:例えば大きい国、中国とかだと、エリアによってだいぶ味やメニューも違うので一言で「中国の朝ごはん」だけだと全部は説明できないんです。

逆に面白いなと思ったのは世界で一番大きなロシア。

ロシアは元々、社会主義国家のソ連だったので統制が行われたらしくてあんなに大きい国なのに大体同じもの食べてるんです。


インタビュアー:朝ごはんを通して歴史も学ぶことができるんですね。


木村さん:そうですね、教えてもらってる時に基本的な歴史が理解できてないとわからないと思うんだけど、そういうの(歴史と食文化)がつながると興味深いですね。

あとは、植民地の関係。

例えばベトナムだとフランスの植民地だった歴史があるから、結果的にコーヒーをよく飲んだり小麦製品を食べたりする。そこに中国の文化が混ざって今のベトナムの食文化ができているんです。

フランスって食べ物がおいしい国で、(ベトナムは)そういう影響を受けてるから料理がすごくおいしいんです。


インタビュアー:確かに、ベトナムはパンが美味しいって聞いたことがあります。


木村さん:そうですね。でも米粉でパンを作ることも多く、米粉パンで作るバインミーっていうサンドイッチがあります。



自国の文化をもう一度見直してみてほしい

インタビュアー:長年やってきた中で、やりがいや嬉しかったことなどはありますか。


木村さん:現地の人が実際にお店に来て、喜んでくれて嬉しいっていうのももちろんあります。

また、日本の人が外国の文化を「面白い」と感じて異文化理解につなげるってすごく重要で、口コミとかでただ「おいしかったです」というのも嬉しいんですけどそれだけでなくて、「また次の国のメニューが食べたい」とか「その国に行ってみたい」とかそういう言葉をいただくとやりがいを感じます。

あとはそう言った異文化理解の先に生まれる「日本文化もちゃんと見直したい」という声も嬉しい。誰でも行き着くところは自分の国で、日本に生まれ育った人には日本の文化っていうものをもう一度見直してもらいたいので。



インタビュアー:「食文化」はやはり異文化を理解する上で重要なツールであるとお考えになりますか。


木村さん:そうですね。やっぱり自分の国の料理を食べてもらって美味しいと言ってもらえたら嬉しいですよね。

食べ物はみんなが共有しているもので、それを美味しいって言ってもらえたら自分のアイデンティティが受け入れられてる感じがすると思うので。日本語を頑張って勉強して話せるようになってほしいというよりは日本の料理を食べて美味しいと思ってくれたり笑顔が広がってくれたら嬉しいですね。



インタビュアー:5年後、10年後など将来挑戦したいことはありますか。


木村さん:元々ゲストハウスをやっていて飲食店を始めたため飲食のプロではないので(笑)飲食店を経営するっていうこと自体がなかなか慣れておらず大変なんですけれども、そういうのが落ち着いてきたら、朝ごはんだけだと伝えきれないものを発信していけたらなと。教えてもらったりしながら思いつくことはできる限り挑戦していきたいなと思っています。




伝統の中で発見する「最先端」

インタビュアー:読者へのメッセージをお聞かせください。


木村さん:例えば日本に生まれ育った人は、自分が日本で生まれ育っているということは変えられない。例えどんなに外国に憧れてもその外国にずっと住むということは難しいし、見た目も変えられない。

だから、日本人を否定するんじゃなくて、日本で生まれ育った背景や日本文化を中心として自分の国の文化をまずはしっかりと知ることが大切だと思います。

僕らもたくさんの外国人と話す機会がありますけれども、向こうとしてもこちらとしてもお互いの文化を知りたいと思うんです。そんな時にこっちが「知りたい!教えて!」だけだとコミュニケーションが成り立たないですよね。異文化を教えてもらって楽しいということ以上に、自分の国のことを知っておいてしっかりと発信できるようにならなければいけない。それが多様化においても重要なことだと思うので。


インタビュアー:学生の読者へのメッセージももし良ければお聞かせください。


木村さん:高校生から大学に行ってとなると将来に向けて専門性が出てくると思います。

僕も実は大学で建築の勉強をしていて、それこそ外国人が建てている建物かっこいいなあとか憧れていたんです。でもふと気がついたのはそういうの(新しい建物)作れる人ってあんまりいなくて、外国旅行とかしててもわかると思うのですが99%くらいの建築士って自分の国の建物を修復してるんですよ。

1%のスター建築家だけが最新建築を作っていて、で日本人だけがみんなのそういう真似をしてその辺のこういうちっちゃい建物でも(笑)建築家が建てたような新しいもの作ろうとしているんです。でもヨーロッパにはほとんど古い建物しかなくて、新しい建物は本当に少ない。なんかそれにすごく違和感を覚えて。そこから日本建築を勉強しようと思って、そこからゲストハウスをやってという流れで...。

もちろん最先端の建物もかっこいいんだけれど、そういう1%のスター建築家が作るものはヨーロッパの伝統の先にできているので安易に真似ると失敗するんですよ。

だから、日本に生きる皆さんには日本のことについてもしっかり考えてほしいなという風に思っています。どんな職業でも、まずは日本をベースにして考えてみて、そこにはこれからの最先端につながるようなアイデアもあったりするだろうし、伝統的なものの中にヒントが見つかるかもしれません。

生まれ育った文化をもう一度見直してみるというのはこれから多様化する世界の中でとても大切になってくると思います。



多様化していく社会の中で

「自分の生まれ育った環境にもう一度自覚的になること」

「自国の文化を理解し、きちんと発信できる人になること」 

が大切だと木村さんは語ってくださった。


皆さんもぜひWORLD BREAKFAST ALLDAYを訪れて

世界の朝ごはんを知ると同時に

もう一度自国の文化にも目を向けてみてはどうだろうか。




WORLD BREAKFAST ALLDAY 外苑前店
東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F
TEL: 03-3401-0815
URL: https://www.world-breakfast-allday.com/




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